コースの概要
21世紀は生命科学の時代と言われており、ヒトの全遺伝子配列の完全解読が終了し、生命科学研究は生体分子の構造と生理機能解析に移行しています。
生命科学科は、これまで複雑かつ難解であった生命現象を、生物学・化学を中心に、原子・分子レベルで解析することにより、医薬品や健康食品などの生命科学産業にとって必要な基礎的要素を身につけた人材を教育することを目標としています。
生命科学科は原子レベルでの生体分子の解析から、細胞、個体の生理機能解析に至るまで多岐にわたるほか、自然界からの有用生物・遺伝子などの検索や、生体素子のデザイン応用まで、独創的かつ斬新な教育研究を行っているスタッフから構成されています。
生命科学科は研究者・技術者を目指す次のような人を求めています!
- 生命科学に深い興味をもち、研究を通じて社会に貢献したいと願う人
- 独創的な研究により、生命科学における新発見をめざす人
- 自ら考え行動する積極性のある人
どんな人材を育てるか
将来の生命科学の研究者や高度な技術者を養成し、生命科学の知識や思考を生かせる職業に携わり、開拓的な役割を担うことができる人材を養成します。
研究テーマ
生物機能分子合成化学分野
生命現象を制御する有機化合物の創成
生命は様々な生体分子間の相互作用によって支えられています。相互作用は生体分子と比較的小さい分子量の物質(小分子)との間でも起こります。好ましい相互作用が起こる小分子には医薬品が含まれます。好ましくない相互作用が起こる場合は毒になりますが、その相互作用を解析すると、新たな生体分子の機能が発見できることもあります。このような、小分子と生体分子の相互作用による生命現象の調節・制御の様子を詳しく解析するため、生物活性を持つ天然由来の小分子を精密に合成する研究や、人工的な改変を加えた分子を創出する研究を展開しています。有機合成化学が基盤になりますが、生命科学の知識も欠かせません。
生物模倣分子化学分野
生物機能を模倣する分子を合成し、その特異的な構造と機能を明らかにする研究
生物内で起きている様々な反応は水素結合などの弱い相互作用が重要な役割を担っていることが知られています。弱い相互作用を介して起きている様々な機能をより詳しく理解するために、それらの生物機能を模倣するような分子を人工的に合成し、それらの分子構造と機能性について明らかにする研究を行っています。
生物分析化学・生物構造化学・計算化学分野
タンパク質のかたちとはたらきを知り、医療や産業に導く研究
タンパク質は、例えばヒトには10万種類が存在すると考えられ、様々な生命現象の主役を担っています。私達の研究室では、様々な疾患の原因となるもの、産業用触媒や農作物の病害菌駆除に役立つもの、あるいは、ナノマテリアル材料となるものなど、重要なタンパク質を選択し、それらのはたらき(機能)とかたち(構造)を分子レベルで明らかにすることで医療技術の発展や環境に優しい社会の実現に貢献する研究を行っています。
生物分子科学分野
分子・原子レベルの解析から、疾患の発症原因と医薬品の作用機序の解明を目指します。
タンパク質は炭水化物、脂質とともに三大栄養素と呼ばれ、生命現象において中心的な役割を担っています。生物分子科学研究室では、タンパク質の構造と機能を分子・原子レベルで解析し、そのタンパク質の生体内での役割を解明することを目的として日々研究を進めています。タンパク質の機能・役割を解明することは、疾患の発症原因、医薬品の作用機序の解明、新薬開発につながることが期待できます。また、タンパク質は優れたナノバイオマテリアルでもあることから、薬物輸送システム等へのタンパク質の応用を目指した研究を行っています。
分子細胞生理学・細胞生物学分野
遺伝子制御による病気の治療法開発を目指します。
我々は、様々な病気から体を守っている免疫系を構成する多くの細胞群のうち、抗体を作る機能を持つBリンパ球の分化や活性化に重要な分子を発見し、その分子がどのように働いているのかを遺伝子工学の手法を用いて動物の個体レベルで明らかにしようとしています。また、共焦点レーザー顕微鏡などで細胞内のタンパク質を可視化することで、様々な疾患の原因となる異常タンパク質の分解機構を明らかにしたいと考えています。
担当教員
分子遺伝学分野
多細胞生物の組織・器官の構築原理およびその破綻による疾患の発症機序の解明
私達の研究室では、ショウジョウバエ遺伝学やライブイメージング、数理モデルを含む多角的な解析手法を駆使することで、多細胞生物の組織・器官の構築原理に関する研究を行なっています。本研究を通して、生命の神秘を紐解き、様々な疾患の発症機序を解明することを目指します。
神経行動遺伝学分野
記憶ができるしくみとその破綻による認知行動変容のメカニズムの理解
「好きな人にアプローチする」「嫌いなものは食べない」
好き・嫌いは、私たちヒトを含む動物の行動原理であり、記憶メカニズムの根幹を成します。私たちの研究室では、ショウジョウバエ遺伝学と神経科学的手法を用い、好き・嫌いの脳神経基盤、その機能の変調がもたらす楽観や悲観といった認知バイアスのしくみ、さらにうつや依存症といった精神疾患の発症機序を明らかにすることを目指しています。